前回の記事で予告した通り、今日は私に『源氏物語』の世界を教えてくれた本について書こうと思います。
私は小学四年生の時、小学校の図書室でこちらの本に出会いました。
冴木奈緒さんが描かれた『くもんのまんが古典文学館 源氏物語』(くもん出版、1990年)という漫画です。
綺麗なお姫様がたくさん出てくる、素敵な恋物語。
私はすっかり『源氏物語』の世界に魅了され、小学校を卒業するまで図書館で何度も何度もこの本を読みました。子供の作り方を知らないおぼこだったので、「光源氏と藤壺は結婚してないのに、なんで二人の間に子供ができるの?」と不思議に思っていました(笑)。
そして中学校の図書室で瀬戸内寂聴さんの『わたしの源氏物語』(集英社、2008年に再販されたようです)に出会い、『源氏物語』の沼に引きずり込まれたのでした。
冴木源氏を本屋で見かけたことはなかったので「もう二度と読めないんだろうな~」となぜか思いこんでいたのですが、先日思い立ってネットで検索してみたら、古い本、しかも小学生向けの本(つまり発行部数は多くない・・・かもしれない)なのに、まだ売っているではありませんか・・・!
当時は分からなかったけど、この漫画に出会った日は私にとって運命の日だったんですよね。
この漫画を読まなかったら大学で古典文学を専攻することはなかったかもしれないし、大学院にも行かなかったかもしれない。夫とはたぶん出会わなかった(夫とは源氏物語研究会というサークルで出会いました)。そしたら子供達も産まれなかった。我が子に『源氏物語』に因んだ名前をつけることもなかった。
正に運命を決定づけた一冊です。子供達がいつか読んでくれるかもしれないという思いもあり(押しつけませんけどね)、購入を決めました。
読むのは25年ぶり。感慨深くて、手が震えました。
この漫画は小学生向けなのでダイジェストになっていますし、全体的に原典よりも美しい世界となっています。
・紫の君を手籠めにしないし、柏木に嫌味を言わない光源氏(←ひたすら自分と藤壺の不倫を反省)
・一切嫉妬心を口にしない、従順な紫の上
・ごつい頭中将(原典の彼はイケメン設定だと知った時は驚きました)
・明るく朗らかな末摘花
・チャラそう(笑)な夕霧。夕霧と雲居の雁は夫婦喧嘩しない。
・落葉の宮は存在しない
・大君と中の君は脇役で、宇治十帖のヒロインは浮舟
原典とは違う箇所もありますが、小学生向けなのでこれでいいと思います。濡れ場がカットされているので子供にも読ませやすいですよ(光源氏と朧月夜が同衾しているところに右大臣が踏み込んでくるシーンだけはありますが、生々しくはないのでOK)。『源氏物語』を漫画化した作品はたくさんありますが、大抵は性的な場面が(原典よりも)濃厚で、小学生に読ませるのはちょっと・・・って感じなのでね^^;
絵も非常に美しいです。
お子様に『源氏物語』を読ませたい方、この漫画は本当にお勧めですよ。
最後に。
冴木奈緒様、あなた様のおかげで私は『源氏物語』と出会い、充実した時間を過ごさせていただいております。私はきっと死ぬまで『源氏物語』が大好きです。この作品を描いてくださり、本当にありがとうございました。