大学生の時、半年間だけ、アメリカ人の日本文学研究家が来日し、授業をしてくれたことがあります。
その先生は、当時、源氏物語研究会というクラブの部長だった私にこう言いました。
「日本人は何で大切なお金に、あんな最低な男を印刷するの?」
最低な男が誰を指すか分かりますか? そう、それは『源氏物語』の主人公である光源氏のことです。
あまり流通していないですが、二千円札ってありますよね。
二千円札の裏面は「源氏物語絵巻」(左)と「紫式部日記絵巻」(右)から構成されています。
「源氏物語絵巻」のほうに注目してください。これは鈴虫巻を描いたものなんですが、男性が二人いますよね。左が冷泉院(表向きは光源氏の義弟だが、実は光源氏の実子)、右が光源氏です。
かのアメリカ人の先生は、この二千円札のことを言ったんですね。「お金はその国にとって重要なものなのに、なんであんなプレイボーイを載せるのか。日本人が理解できない」と先生は言いたかったわけです。
光源氏は女をとっかえひっかえする最低な男――これは現代人がよく言う台詞ですね。
でも私はそうは思わないんです。「むしろ『源氏物語』に出てくる男性の中だと、光源氏は良いほうじゃない?」なんて思います。薫とか匂の宮のほうがひどいんじゃないかと・・・。
女をとっかえひっかえする――と言いますが、当時は一夫一妻制ではなかったので、現代とは価値観が違って当たり前。光源氏には「一度関係を持った女性はずっと大切にする」という長所もあります(その点、匂の宮はひどいですよ。女に飽きたらポイ捨てですから・・・)。
私が光源氏に同情的なのは、光源氏の気持ちが分かるからなんですね。
光源氏は3歳の時に母と死別します。亡き母の面影を求めて、いろいろな女性に手を出すわけです。
私自身は4歳の時に父と死別しました。だから「亡くなった異性の親」を理想の存在と思いこんでしまう光源氏の気持ちが分かるんです。私にもし光源氏ほどの美貌と度胸があったら、私も男漁りをしたでしょう(笑)。
光源氏はものすごいお金持ちです。光源氏に庇護されなかったら生活に困った女性はたくさんいます(紫の上も花散里も空蝉も末摘花も、光源氏に出会えなかったら不幸だったんじゃないかなぁ。末摘花に至っては餓死したかも・・・)。
――光源氏って本当に最低な男なの? 女の敵なの?
『源氏物語』を読んで、確かめてみませんか?
[http://
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