『源氏物語』を原文で読む

広島市中区・安佐北区で源氏物語講座を行っている講師のブログです

浮気する男の心理

私は第一子を産んだ後、しばらくいっぱいいっぱいになっていました。

 

おっぱい、ミルク、抱っこ、おむつ替え、離乳食、夜泣き等々・・・。365日24時間フル稼働。夜中によく起きる子だったので、私自身、あまり寝た記憶がありません。

 

出産前までは毎日オシャレして都心の大学院に通っていたのに、生活は一変。会話の相手は夫のみ・・・だけど夫は仕事で不在がち。まだ日本語を話せない赤ちゃんと、二人きりで世界の片隅に取り残されたような気がしました。

 

育児って大変だな~。

 

溜め息をつきながらふと思い出したのは、雲居の雁のことです。

 

雲居の雁は幼なじみである夕霧と結婚し、8人の子を産みます。

 

雲居の雁は大貴族の奥様だから自分で子育てをする必要はなかったと思うのですが(乳母に全部任せて、自分は優雅に暮らしたって良いのです)、彼女は乳母達の手は借りながらも、きちんと自分で子供達の面倒を見ています。赤ちゃんの夜泣きにもちゃんと付き合ってて偉いです。

 

雲居の雁は幼い頃に両親の離婚を経験しています。父(頭中将)に引き取られたのですが、父からかわいがってもらったわけではなく、祖母(大宮)の元へ預けられっぱなし(ここでいとこの夕霧と一緒に暮らします)。「自分が寂しい思いをしたからこそ、子供達には愛情をいっぱい注ぎたかったのかな?」なんて私は感心するのですが・・・。

 

なんとなんと、真面目亭主だった夕霧は浮気してしまうのです。亡き親友の妻・落葉の宮に心惹かれ、落葉の宮に拒まれているのに関わらず、強引に結婚してしまいます。

 

ひどい! 裏切りだ!

 

・・・とは思うのですが、私は夕霧の気持ちも分かってしまうのです。

 

可憐だった妻が、出産後太り、育児にかまけて綺麗にしなくなる。子供の世話のために、額髪を耳に挟むという、当時は「みっともないこと」とされたこともしてしまう。たまには風流なことでも・・・と思って「一緒に月を眺めようよ」と誘っても断る(雲居の雁は夕霧が落葉の宮に惹かれているのに気づき、拗ねていたのですが)。邸の中はぐちゃぐちゃ。所帯じみた我が家にうんざり。

 

一方の落葉の宮は、かわいそうな、子供のいない未亡人。趣味の良い邸で寂しげに楽器を演奏する皇女様。

 

・・・うん、そりゃ、好きになるよね^^;

 

毎日毎日育児に追われる身としては、雲居の雁がオバサン化した経緯はよく分かるし、「忙しくてオシャレなんてしてらんないわよ!」という気持ちも分かります。でも、夕霧の気持ちも分かる・・・。

 

育児は大変。母は大変。でも夫婦円満のためには「かわいい妻」でありつづけることも大事なんですよね。

 

源氏物語』は千年前の文学なのに、現代にも通用する教訓が書かれています。これってすごくないですか。

 

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