『源氏物語』を原文で読む

広島市中区・安佐北区で源氏物語講座を行っている講師のブログです

三角じゃなくて四角?

今日は浮舟巻を読み返しました。

 

私は今まで、薫・浮舟・匂の宮の三角関係だと認識していました。でも原文を改めて読んでふと思ったんです、実は薫・浮舟・匂の宮・中の君の四角関係なんじゃないかと。

 

今までは「なんで匂の宮は簡単に浮舟と情を交わしちゃうのかな~。兄弟のように育った薫に対する罪悪感はないの? 匂の宮ひどい^^;」と思っていたのですが。

 

今日は「ああ、そっか、匂の宮からしたら「先に俺を裏切ったのは薫と中の君のほうだろ」っていう認識なのかも」と思ったんです。薫と中の君は不倫していませんが、匂の宮は二人が不倫しているんじゃないかとずっと疑っているんですもんね。匂の宮からしたら「俺の女(中の君)に薫が手を出したんだから、俺だって薫の女(浮舟)に手を出してもいいだろ」って感じなのかな。二条院で見かけた浮舟をどうしても自分のものにしたかったというのもあるんでしょうけど。

 

薫は中の君と身体の関係は持っていないけれど、かなりしつこく彼女に迫っていますよね。浮舟を囲うようになってからも中の君に未練たらたらなんだから、困った人です^^; もう諦めたほうがいいよ・・・。浮舟と関係を持ちながらも、大君のことばかり考えてるしなぁ。罪なお方^^;

 

薫は中の君と浮舟を大君の身代わりにしようとしてるし(『源氏物語』のテーマのひとつが「形代の愛」だから仕方ないですが)、匂の宮は友人の女に横恋慕してるし、浮舟は二人の男の間でフラフラしてるから、「お互い様」って感じがしますが、中の君だけはかわいそうですね。中の君に落ち度はないのに、姉に恋していた男が何度も恋情を訴えてくるし、挙げ句の果てに夫が自分の妹と不倫するんですよ? 気の毒すぎる・・・。中の君が真実に気づかなくて良かったですよ、ホント。

 

常に浮舟と大君を比べて、浮舟に不満を抱いている薫。でも薫は召人以上の扱いをしてくれる。

 

危険を省みずに宇治へやってきて情熱的に抱きしめてくれる匂の宮。でも匂の宮は浮舟を姉の女房にする気満々。

 

どっちがいい男なんでしょうね?  どっちも嫌かな(笑)。私はやっぱり薫や匂の宮よりも光源氏のほうが好きだな。

 

薫と匂の宮の関係って不思議ですよね。よく一緒にいるので仲が良いんだろうとは思うんですけど、中の君と浮舟を挟んでギスギスするのもまた事実なわけで・・・。

 

光源氏と頭中将夕霧と柏木は「親友!」という感じがするのですが、薫と匂の宮の場合は「親友」と定義できるのかどうか・・・。彼らはそもそも「友人」なんでしょうか?

 

でも、薫と匂の宮の危ういバランスの上に成り立っている関係は個人的にとても好きです。光源氏と頭中将、夕霧と柏木のコンビにはないほの暗さがいいですね。

 

余談ですが、薫に関して一番好きなのは、彼が「人木石にあらざればみな情あり」と口ずさむシーン(蜻蛉巻)です。