先日、記事をアップしてから気づきましたが、11月1日は古典の日でしたね。
『紫式部日記』の寛弘5年11月1日(1008年12月1日)の条に、藤原公任が紫式部に対して「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ」(そういえばこのあたりに若紫の君がいらっしゃるのでは)と語りかけた、と書いてあります。
これが『源氏物語』に関する最古の記述です。
このことから、源氏物語千年紀であった2008年に「11月1日=古典の日」とされました。一般人にはほとんど知られていませんが・・・^^;
「古典の日」制定に関わった人物のひとりに秋山虔先生がいらっしゃいます。「源氏物語研究者といえばこの人!」と言っても過言ではないぐらいの、大きな功績を残された先生です。愛子内親王の名づけ親のひとりでもあります。
秋山先生は生前、私が在学していた大学で、一度、講演をしてくださったことがあります。
当時20歳だった私は物怖じせず、秋山先生にたくさんの質問をしました。先生はそのひとつひとつに真摯に答えてくださいました。
びっくりしたのは、私の先輩が秋山先生に対して「先生! 年賀状を出したいので、住所を教えてくださ~い♡」と言い放ったことです。
先輩の大胆な発言に驚きましたが、私も若かったので、先輩を止めることはできませんでした。今の私なら「日本を代表する大先生に対して何てことを言うてんねん・・・!Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)」と震えてしまいますが。
秋山先生は先輩の失礼な申し出に怒ることなく、笑顔で住所を教えてくださいました。
そして私も若くて礼儀知らずだったので、先輩に便乗する形となり・・・。結果的に、先輩・私・同級生の3人が秋山先生に年賀状を出してしまいました。
秋山先生なら全国から何百通という年賀状が届いていらしたのではないかと思います。
その中に紛れた、私達の年賀状。一度会っただけ、そしてもう二度と話す機会はないだろう女学生達からの年賀状。
返事なんて来ないのが普通だと思います。御多忙な先生ですし、私達は先生のゼミ生でも何でもなかったのですから。
それなのに、秋山先生からは返事が届きました。しかも3人がもらった年賀状を並べてみたら、すべて違う文面でした。
すごい先生だなと思いました。業績だけじゃない、人柄が素晴らしい先生だなと感動しました。
それを大学の教授(秋山先生と関りがあった方)に報告したら「秋山先生は人格も一流んですよね」と言われました。
「研究は素晴らしい。けど、性格に難あり」な先生も過去にいらっしゃったようです。その性格が災いして、仕事で上り詰められなかったことも・・・。
その点、秋山先生は本当に御立派な方でした。ネットで訃報を知った時は胸が痛くなりました。
秋山先生と出会うことができて本当に幸せでした。先生、ありがとうございました。
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