フォロワーさんに勧めていただいたこちらの本を購入して読みました。
「性と愛」という題名の一部分で一瞬ギョッとするかもしれませんが、偉大な研究者が執筆された、非常に真面目な本です。ある程度の古典の素養がないと理解するのが難しいので、上級者向けの本かなと思います。
自分のためのメモという意味合いも兼ねて、この本に書かれていたことの一部を簡単にまとめてみます。
古代共同社会→同性愛はタブー。
生産性がない、つまり出産できないため。
8世紀まで(~奈良時代頃)→男女の性愛は対等(天皇の周辺は除く)。
・女から誘うのもOK。
・女が男のプロポーズを断ってもOK。
・女が夫以外の男と関係を持っても許される(=「強姦」や「密通」という概念がない)。
・衝動的に関係を結ぶので、夫婦に「生涯を共にしよう」という意志はない。
9~10世紀(平安時代前期頃)→男性優位の性愛開始。
・「夫婦=生涯を共にする」という考え方になる。
・夫は多くの妻妾・女房・遊女等と関係してもOKだが、妻は夫以外の男と関係を持ってはいけない。
・「強姦」「密通」「男色」はタブー。
11世紀(平安時代中期頃。『源氏物語』が書かれた時代)→男性優位の性愛。
光源氏と小君の関係は「男色関係」ではなく、「同性同士の愛着」にすぎない。
12世紀(平安時代後期頃)→「男女の性交=不浄」という考え方になる。
・「処女=善女」と讃えられる(既婚女性でも)。
・「男女の性交=不浄」なので、男は男色を求める。
非常に勉強になりました。
個人的に
・『万葉集』の時代は男女が対等で、女も活き活きしてる。
・(『源氏物語』では「和歌は男から詠みかけるもの」とされているけれど)『伊勢物語』では女から詠みかけている場合も多いよね。
・光源氏と小君は身体の関係があったけれど、光源氏は小君のことを紫の上や藤壺と同列に愛していたわけではないよね。光源氏が愛しているのはあくまでも「女」。
・現代ではヴァイセクシャルって奇異な目で見られるけど、昔の人にとってはそれが普通だよね。
等とかねてから考えていたので、この本を読むことでいろいろと考えが深まりました。
この本を読んでひとつ思い出したのは、大学時代の同級生が卒論で「性器を表す語彙の研究」をしていたことです。
私も含めて周りの学生は一様に驚きましたが、これも真面目に取り組めば立派な研究なんですよね。決して「卑猥」の一言で片づけて良い話ではないのです。
男性器、女性器の名称の歴史的変遷についてもこちらの本で詳しく取り上げられていますので、興味のある方は御一読くださいませ。