『源氏物語』を原文で読む

広島市中区・安佐北区で源氏物語講座を行っている講師のブログです

源氏物語のBL要素

世の中には「腐女子」と呼ばれる人達がいます。

 

腐女子=男性同士の恋愛を扱った作品を好む人」ですよね。

 

私は10代の頃、腐女子のことがまったく理解できませんでした。

 

有名な漫画をBL化した二次創作なんかが目に入ろうものなら、「作者に対する冒涜だ!」なんて憤ったものです。頭が固い人間なので。

 

BL=気持ち悪いもの。おぞましいもの。

 

昔の私はこんなふうに思っていました。

 

だから、「光源氏と小君(空蝉の弟)には身体の関係があったんじゃないか」という説を知った時はびっくり仰天しました。

 

いやいやいや、そんなバカな。ありえない――ってね。

 

しかし20代になり、人間が多少丸くなってから、認識が変わりました。「BLはBLでアリなんだな。これはこれでいちジャンルなんだな」と。

 

そう思えるようになってから帚木巻の最後や空蝉巻の冒頭を読み返したら――。

 

あー、うん、そうね、光源氏と小君はプラトニックな関係じゃないね^^;

 

源氏物語』の愛は「形代の愛」と言われています。

 

源氏物語』の男達は愛する人と結ばれないから、その身代わりになる人を愛するんですよね。

 

桐壺帝は桐壺の更衣を失ったから藤壺を、光源氏藤壺と結ばれないから紫の上を、薫は大君と結ばれないから浮舟を愛するのです。冷泉院もさすが光源氏の実子というか・・・玉鬘と結ばれなかったから、代わりに玉鬘の長女を寵愛していますよね。

 

しかし、光源氏は空蝉と結ばれないからって、空蝉の弟と契るのか・・・。形代の愛の対象が男の子にまで広がるなんて、すごいな・・・^^;

 

新編日本古典文学全集の帚木巻の最後の辺りの頭注には「思いを寄せる女の代償をその肉親の男性に求める例は珍しくない」と書かれています。

 

そうね、昔の人はバイセクシャルでも普通だもんね。現代の価値観に当てはめてびっくりしちゃいけないよね。

 

ちなみに、匂の宮と東宮(匂の宮の長兄)も大夫の君(紅梅大納言の息子)と男色関係にあったようです。

 

お兄ちゃんと弟が幼い男の子をかわいがっているのか・・・。すごい図ですね^^;

 

当時の身分ある人にとっては異性愛と同性愛は共存するもので、「それはそれ。これはこれ」だったんでしょうね。

 

平安貴族は現代人よりも自由に恋愛できて楽しかったのかな。それとも気苦労が多かったのかな(嫉妬心から生霊になるような人もいたわけだし)。どうなんでしょうね。